打豆(打ち豆)の歴史と食文化

~「打豆(打ち豆)」とは~
福井の歴史と風土に深く根付いた郷土食~

福井の食と時代的背景

かつて福井では、雪深い気象条件下で豊かな食生活がなかなか得られなかったため、収穫された食材を上手に活用する工夫が多く見られました。
打豆(うちまめ)もその一つで、大豆を石臼の上でつぶし、乾燥させたものです。
古くから福井では伝統的な大豆の保存食として、豆腐や油揚げと一緒に食卓に「打豆」が使われてきました。

また、曹洞宗の本山である永平寺や浄土真宗の門徒が多く存在するなど、宗教との関わりも強く、浄土真宗の文化が暮らしの中に浸透していました。

福井の食と時代的背景

家庭で保存食として作られた「打豆」

浄土真宗と報恩講

福井県は真宗十派のうち4つの本山が存在する真宗王国であり、本願寺派390、大谷派276、そのほか多数派存在し、とくに県北部にその寺院が集中しています。

浄土真宗の主な仏事としては、報恩講、お講、尼講、その他として御正忌、永代経法要などがあげられます。
これらの仏事は集まる人数が多く、そこで用意される食事は多人数分を迅速に、安価に作る必要がありました。

とくに大きな仏事である報恩講の開催時期は大豆の収穫期と重なる10~11月であり、多人数分の打豆(うちまめ)を十分に用意しやすかったという背景もあり、打豆は代表的な報恩講の精進料理の食材として利用されてきました。
献立と料理法は口頭における伝承で伝えられ、打豆を使用した料理としては、みそ汁(打豆汁)が最も多く、次に酢の物(打豆なます)がよく作られました。

報恩講

門徒が寺に集まって午前・午後のおつとめを行い、説教を聞く報恩講

報恩講とは

報恩講は浄土真宗の寺院で年に1回、開祖親鸞聖人の恩徳をしのんで門徒が集まり、説教を聴き、収穫物を持ち寄って食事をとる仏事の一つ。10~11月に実施されることが多く、料理は50人分程度を作る。

報恩講の膳

親鸞聖人の命日、報恩講の膳
(写真出典:「旬の里ふくい」提供)

お講さま(報恩講)のおつけ(味噌汁)

お講さま(報恩講)のおつけ(味噌汁)。
大根、油揚げ、打ち豆、季節の野菜を入れて、味噌で味付けをして出来上がり。
極楽の水が入っているんや~と言われるくらいおいしい。

打豆なます

報恩講で食される「打豆なます」

このように、昔から多人数分を迅速に、安価に作るための食材として各家庭で打豆が使用されてきたという背景と、暮らしに宗教や仏事という行事が密接に結びついていた文化的背景もあいまって、「打豆」が福井県の食文化として根付いていったと考えられます。